「防災4.0」は、地球温暖化に伴う気候変動に関する科学的知見を踏まえ、「災害リスクへの備え」について検討して提言を行うためのプロジェクトのことです。
特に伊勢湾台風(1959=1.0)、阪神淡路大震災(1995=2.0)、東日本大震災(2011=3.0)は大きな転換点となって、行政だけでなく一人一人が災害のリスクとどう向き合うかを考え、備えるための契機となるようあらたな防災減災対策の方向性を打ち出したいという決意を込めて、本プロジェクトの名称に「防災4.0」とされたのです。
画像出典:内閣府
『防災4.0』未来構想プロジェクト
近年、我が国において、極端な集中豪雨により、大きな人的・物的被害が発生するなど、自然災害の激甚化が進んでいます。
そして、今後、地球温暖化に伴う気候変動の影響により、規模のより大きい台風やその他の集中豪雨等による甚大な災害が発生するリスクが大いに懸念されています。
地球温暖化による負の影響をできる限り食い止めるために最大限努力していくとともに、国や地方公共団体による「公助」の充実はもとより、国民一人一人あるいは一つ一つの企業が、自らあるいは地域における繋がりを再構築しながら、高まる災害の危険性(リスク)に向き合い、「自助」「共助」による備えを確かなものにすることなくしては、国民の貴重な生命、財産を守りきることができないのではないでしょうか。
このような問題意識を背景として、「『防災4.0』未来構想プロジェクト」が設置されました。
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最新の知見を活かした関係諸制度の制定や改正を通じ、防災対策の強化を図っています。
災害対策関係法律一覧
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行政(国・地方公共団体)のみならず、地域、経済界、住民、企業等の多様な主体のそれぞれが、防災を「自分ごと」として捉え、相互の繋がりやネットワークを再構築することで、社会全体の復元力(レジリエンス)を高め、多様な災害に備える社会を、「防災4.0」の目指す姿です。
気候変動に伴い予想される災害の激甚化
災害は、自然現象単独で発生するものではなく、人間社会との相互作用の中で発生します。
すなわち、異常気象等の原因があったとしても、人里離れたところで発生するのであれば災害の発生には至らず、また、社会が強靭な防災体制を有していれば、災害の程度は自ずと異なってくるのです。
地球温暖化の影響を受けた結果、気候変動(降水強度や頻度の変化)が起こっても、そのことが災害リスクの増加に直結するものではありません。
防災意識の向上や高台への移転等の社会環境や都市立地の改善に資する防災対策の推進により、そのリスクを低減することが可能である一方で、高齢者人口の増加のようにリスクを増加させる社会的要因が存在することに留意する必要があるのです。
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復元力(レジリエンス)の確立
自然災害をはじめとするあらゆるリスクに備えるための社会全体の在り方を検討する視点として極めて重要です。
世界的な潮流として政策的指向が「Strength」(強度)から「Resilience」(復元力)へと転換する中、そのような社会の復元力を確立するためには、以下の4つの考え方が柱となります。
- 環境適応力 … 整いすぎた計画ではなく、むしろ常に危機に備え対応できる計画策定の態勢
- リスク判断力 … リスク・リテラシー=固定化した「成功例」を疑うこと
- 多重性・代替性の確保 … リダンダンシー=多重防御(ムダの効用)
- 社会関係資本 … 自助・共助・公助・縁助(ネットワーク効果等)
これらの考え方に立ち、国と組織と人々の復元力(レジリエンス)を高めていくことが重要です。
防災まちづくりに貢献する「防災DX」
行政手続きのデジタル化のように国が標準化して進められるDXとは異なり、DX推進における防災行政は特殊な分野です。
DXとIT化の違いについて簡単に考えてみると、DXは結果を、IT化は手段を指すと言えます。
災害対応の現場では、極限状態の中で、被害、復旧、要請等、様々な状況を迅速に把握し、的確に意思決定・行動することが求められます。
出典:国立研究開発法人防災科学技術研究所
そのために「情報」が不可欠
災害時情報共有システム
災害時情報共有システムとは
災害発生時に、事業所の被災状況を事業所と自治体、国(厚生労働省)の間で情報共有するためのシステムです。
国を通じて被災状況の報告を求められた際に、事業所のパソコンやスタッフのスマートフォンを使って、事業所の被害状況を的確に、簡単に知らせることができます。
自治体・国では、事業所から報告された被災状況を速やかに確認・把握した上で、必要な支援につないでいくことができます。
【災害時情報共有の必要性】
- 災害時、個人・組織は同時並行で異なる活動をする
- そのそれぞれが固有の情報を保有している=状況認識が異なる
- 個人・組織同士が情報共有によって、状況認識を統一することが、社会全体として的確な災害対応を実行する姿
- 情報を「共に」「有す」
- 「知らない」を無くす
国や自治体の機能を、市民は生かすことで命を守る行動を最大限にできる。
敵を知り、己を知り、
とりまく環境を知ることが大事
出典:国立研究開発法人防災科学技術研究所
平常時は過去の記録や現在の観測、未来の災害リスク。災害時は発生状況、進行状況、復旧状況、関連する過去の災害、二次災害発生リスクなどの災害情報をを重ね合わせて(クロスさせて)、災害の全体を見通し(view)、予防・対応・回復を通じて活用できるシステムを目指しています。
URL:https://xview.bosai.go.jp/
出典:国立研究開発法人防災科学技術研究所
SIP4D(クラウド)からCPS4D(AI)への展開
フィジカル空間で発生している自然・社会の現象をリアルタイムで把握し、サイバー空間上の「デジタルツイン」で災害動態を解析し、その結果からフィジカル空間で何をすべきかを「フィードフォワード」する技術です。
【CPS4Dのイメージ】
SIP4D(クラウド)からCPS4D(AI)への展開について、では足元である市民の体制はどうなっているのか?
地域住民が自助と共助の意識を高め、企業や施設等がBCPの策定をしておくことで、より円滑な情報を提供できるのです。
【災害時保健医療福祉活動支援システム D24H】
「リアクティブ防災」から「プロアクティブ防災」へ
自然災害を前に人間は無力です。
命に代えてでも大切な人の命を守ると誓っても、発災の瞬間には、何もできないという前提で、防災を考えることが大切です。
現在、日常で積極的に取り組める防災である「アクティブ防災」が中心で、年齢、体調、好み、家族構成や住環境などを考えた、一人ひとりに合った「オーダーメイド防災」の意識を高めることが実践として行われています。
【アクティブ防災で目指すこと】
- 防災を啓発するための企画や伝達のプロの育成
- 共助ネットワークを築くためのコミュニケーションのプロの育成
- 子供と一緒に「生きる力」を伸ばす、考えて行動するプロの育成
そして、企業や施設へのBCP策定を推進し、新たな防災の枠組みとして「プロアクティブ防災」へと移行されていきます。
【プロアクティブの原則-危機管理のトップに立つ者の行動原理】
- 疑わしいときには行動せよ-被害報告を待つな!
- 最悪事態を想定して行動せよ-希望的観測をするな !
- 空振りは許されるが見逃しは許されない-避難勧告等発令!
危機を乗り切るには、平常時の事前の準備・事前の被害対策で9割方の成否が決まるといってよく、その後、危機発生時の心得として、人命優先でプロアクティブの原則でしっかり対応しなければなりません。
発災後、「想定外」という言葉が頻繁に用いられたが、こういう時こそ、この三つの原理を貫徹することが重要です。
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目指すべき未来像は、災害対応過程を常時観測・予測し、
予測情報に基づき先手を打つプロアクティブな対応を行うことです。
【デジタル防災技術による実現】
- サイバー空間に災害過程を忠実に再現する災害デジタルツイン、観測前提のハード整備、現実と同規模情報での対応シミュレーションとフィードフォワード提案、現実データによる即時データ同化
- ブロックチェーン、AI、量子コンピューティング、衛星通信等の要素技術の発展
この国を未来へ、持続可能な社会へと導くために!
小さい力の活動であったとしても、人々の命を暮らしを支えていくために!
どんな小さなことでもご相談ください。全国、zoom対応をしております。